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本井英句集『二十三世』。

 本井英先生の句集『二十三世』(2021年10月、ふらんす堂刊)が出版されました。 2020年の一年間、ふらんす堂のホームページに連載された「俳句日記」をまとめた一冊です。本書には、俳句とともに毎日のエッセイが収録されています。コロナ禍の連載ということもあり、季題についての知見や虚子の句、思い出話が話題の中心をなしています。とりわけ、思い出話は先生の人生の一コマを彷彿とさせるもので、面白かったです。  告ぐ...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年9月号

  毛虫焼けば数珠繋がりに墜ちにけり 「毛虫焼く」が季題で夏。木の枝にでも絡め取った何匹かの毛虫に火をつけたのでしょう。すると、燃えながら毛虫がばらばらと枝から落ちたのです。この句は、その様を「数珠繋がり」と表現していますが、毛虫の落ちざまがよく見えてきます。同時に、「数珠」という言葉に、放っておくこともできず仕方なく焼く毛虫に対する供養の気持ちが出ていて味わい深いと思いました。  木耳の重さずし...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年7月号

  惜しむべき春としもなく過ぎゆくよ 「春惜しむ」が季題で春。何か良くないことが起こった春だったのでしょう。それでも、時がものを解決するように過ぎ去っていくことだと感慨を深くしているのです。虚子に「時ものを解決するや春を待つ」の俳句がありますが、これは冬の間にややこしい出来事があったことになります。掲出句の場合は、謳歌すべき春を不本意に過ごし、それがようやくという気持ちを詠っています。いずれにして...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年6月号

  料峭や病禍地を這ひ海に浮かび 「料峭」が季題で春。風がまだ寒く感じられる頃、流行病が広まってゆくのですが、大地を這うように感染地域が拡大し、一方では海に浮かんだ島の中で爆発的な感染が起こっている、という俳句です。今回のコロナウイルスにあてはめれば、「海に浮かび」はクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号ということになります。「病禍」の描写として、「地を這ひ」はわかりやすいですが、「海に浮かび」は...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年4月号

  駅舎から手洗所まで雪を踏む 「雪を踏む」が季題で冬。雪国の小さな駅なのでしょう、窓口のすぐ横に改札口があってそこから直接ホームに出られる構造なのだと思われます。そして、そのホームに手洗所があるのです。大雪の後、ホームに積もった雪をすべて掻くことはできないので、とりあえず手洗所までの雪を踏んで道をつけたという俳句です。実景が元になっている俳句の強みで、少ない情報ながら駅の佇まいや雪の日の駅員さん...

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