Tag開落去来 1/5

本井英句集『開落去来』鑑賞。その20

  秋空や展覧会のやうに雲 「秋空」が季題で秋。天高しと呼ばれるような広く真っ青な青空に、ちぎれ雲がいくつか浮かんでいるのです。それぞれ面白い造形をしたものが、空の色を背景にして際やかに浮かんでいるのでしょう。作者は、その様をまるで「展覧会」のようだと感じ、しばし雲に見とれていたという俳句です。ひとつひとつの雲の形を描いてはいませんが、「展覧会のやうに」と言われてみれば、読者も記憶をたどって色々な...

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本井英句集『開落去来』鑑賞。その19

  浅間山(アサマ)へと土用の大地迫り上がり 「土用」が季題で夏。立春、立夏、立秋、立冬の直前18日間を土用と言いますが、現在では特に立秋直前を指すことが多いようです。体感的には盛夏の頃にあたります。小諸あたりのいかにも浅間山の裾野という感じの土地を詠ったものでしょう。うだるような暑さの中で、大地が浅間山へ向かって迫り上がっているように感じたのです。山は山で黒々と聳え、大地は大地で隆起するかのような...

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本井英句集『開落去来』鑑賞。その18

  五月鯉ピエタの如く抱き降ろし 「五月鯉」が季題で夏。大きな鯉幟を竿から降ろしてきて両手に受け止めたところを目にしたのです。その姿が、作者の目には、まるで十字架から降ろされたキリストを抱く聖母マリアのように見えたという俳句です。なるほど、今の今まで、さかんに風に吹かれていた鯉幟のだらりとした姿や、それを大切に両手に抱いた格好は、「ピエタ」の聖母子に通じるものがあります。そこに、美しさはもちろんで...

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本井英句集『開落去来』鑑賞。その17

  春節の獅子伸び上がるまだ伸びる 「春節」が季題で春。「横浜 中華街」と詞書が付されています。日本以外のアジアの国々では、いまも旧正月の方を盛大に祝うようです。この句は、横浜中華街の春節で中国風の獅子舞が踊っているのです。黄色い獅子の首が上へするする伸びたと思ったら、一呼吸おいてさらなる高さに伸びたというのです。この句の眼目は、何と言っても「まだ伸びる」の下五です。見物している作者の驚きがダイレ...

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本井英句集『開落去来』鑑賞。その16

  湯どころの山ふところの初薬師 「初薬師」が季題で冬。毎月8日は薬師如来の縁日で、正月8日は初薬師と呼ばれ、参拝すれば特に御利益があるとされています。この句は、山中の温泉場に薬師如来を本尊とするお寺があって、静かに法要が行われているのでしょう。薬師如来は湯治場で信仰されそうな仏様ですし、こんな寺はどこにでもありそうです。正月過ぎとはいえ、湯治客、遊山客も何となく参詣にきて、賑やかというほどでないに...

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