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俳諧師 前北かおる

虹の島年に何度も合歓の咲く――第二句集『虹の島』好評発売中!

 

日下野仁美句集『風の仮面』。


Category: 俳句 > 句集鑑賞その他   Tags:  日下野仁美  風の仮面  文學の森  
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 「」副主宰の日下野仁美さんから句集『風の仮面』(2019年7月、文學の森刊)をいただきました。ありがとうございます。
 平成23年から30年までの作品を収録した第三句集とのことです。タイトルになっている「風」もそうですが、「花」「夢」といった言葉が繰り返し俳句に詠み込まれています。そういった言葉の魅力に改めて気付かされる一冊でした。

  銀漢や叶はぬことを夢といふ
 「銀漢」が季題で秋。天の川を仰ぎながら、自分のことや周りのことに思いを馳せているのです。一年に一度、この川を渡って会うという織姫と彦星のことを思い浮かべたりしながら、ふと「叶はぬことを夢といふ」という考えに思い至ったのでしょう。確かに簡単に叶ってしまうことを「夢」とは呼びませんが、この句ではそれを一歩進めて、叶わないからこそ夢なのだと断言しています。言われてみればなるほどと思いますし、上五の切れも「銀漢」という壮大な季題も、こういった大きな思索にぴったりだと思いました。

  雛流す川原に摘みし花添へて
  連なりて火の帯となる流灯会
  地虫鳴く賽の河原に石積めば
  若菜摘む母が来てゐるかも知れぬ
  一片のあと有耶無耶に牡丹散る
  桐咲くや母の文箱に父の文
  玉虫や形見の服の小さくて
  流灯の消えてこの世の川となる
  ハンカチに包めるほどの熊手買ふ
  花言葉夢といふ種蒔きにけり
    「」新年俳句大会
  雪を来て祝ひの席に着きにけり
  みの虫のごとくベッドに括られて
  紙雛目鼻を入れて流しけり
  銀漢や叶はぬことを夢といふ
  良きことのあるを信じて日記買ふ
  群れ咲きて香り一つに野水仙
  凍蝶の夢を見てゐるだけのこと
  茶柱のまつすぐに立つみどりの日
  まだ飛べぬ身を乗り出して燕の子
  カクテルのやうな人生冬薔薇
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テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

「沖」8月号。


Category: 俳句 > 句集鑑賞その他   Tags: ---

 「沖」8月号を送っていただきました。ありがとうございます。能村研三主宰、森岡正作副主宰の作品から1句ずつ紹介させていただきます。

  明け方は捨て苗のみな立ち上がり  能村研三
  岸に寄る浮巣を風の吹き戻す  森岡正作
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

大崎紀夫句集『釣り糸』。


Category: 俳句 > 句集鑑賞その他   Tags: やぶれ傘  WEP俳句通信  大崎紀夫  釣り糸  ウエップ  
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 「やぶれ傘」主宰で『WEP俳句通信』編集長の大崎紀夫さんから句集『釣り糸』(2019年6月、ウエップ刊)をいただきました。ありがとうございます。
 2017年、2018年の俳句を収録した第十句集とのことです。それぞれ、163句、254句が収められています。短期間の俳句が集められているせいもあるかも知れませんが、題材の選択といい表現といい素っ気ないほどに冷静であるのが印象的でした。肩に力が入っていては見逃してしまいそうな題材に、詩情を見出したような俳句を面白く感じました。

  水出でしばかりの河馬に銀杏散る
 「銀杏散る」が季題で冬。日本の動物園の点景を詠んだものでしょう。水浴びの池から出てきたカバのその巨体に、銀杏の葉が散りかかってきたという俳句です。だんだんと寒さに向かう日本で、銀杏の落葉を浴びているカバには哀れを感じます。また一方で、濡れた巨体に金色の銀杏が散る様は純粋に美しくも思われます。表現は即物的ですが、詩情豊かに情景が描かれているところに惹かれました。

  くべられし枯菊に火のうつりけり
  鉛筆をノートに挟む目借時
  ダンサーが団扇あふぎて帰りゆく
  めまとひへライターの火を振りまはす
  鮎を焼く隣りで握り飯焼かれ
  塩田をころがつてゆく波の花
  砂利山のてつぺんに猫じやらし枯れ
  追ひ焚きの湯につかりゐる去年今年
  前山を雲の影ゆく鳥総松
  釣り餌にひねもす春の蠅たかり
  おぼろ夜の羽田空港管制塔
  海よりの雲低く来る夏あざみ
  採石場すぎてまもなく鮎の宿
  笹舟のひつくり返る日の盛り
  いつぽんの棒立つてゐる日の盛り
  ひまはりの向こうの山は八ヶ岳
  葛の花鼻毛の長き仁王像
  鯊の顔見てより魚籠へ放りこむ
  草虱つけて新宿駅にゐる
  水出でしばかりの河馬に銀杏散る
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

「いぶき」第5号。


Category: 俳句 > 句集鑑賞その他   Tags: ---

 「いぶき」第5号をいただきました。ありがとうございます。共同代表のお二人の御句を紹介させていただきます。
  七夕や鳥籠洗ふ駐車場 今井豊
  あをあをと葉の落ちてくる瀧の中 中岡毅雄
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

瀬島洒望句集『葷酒庵』。


Category: 俳句 > 句集鑑賞その他   Tags: やぶれ傘  瀬島洒望  葷酒庵  ウエップ  
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 「やぶれ傘」同人の瀬島洒望さんから句集『葷酒庵』(2019年6月、ウエップ刊)をいただきました。ありがとうございました。
 2002年から2018年までの作品を収めた第三句集です。タイトルは、三十年来第二の故郷にしていた東松山の隠れ家の名前からつけたものとのことです。第二句集以降、一日十句を実践されているそうで、美しい調べが心地良い一冊です。

  配偶者無しと書き込む夜長かな
 「夜長」が季題で秋。おそらく官公庁に提出する書類を作成しているのでしょう。その中に配偶者の有無を記入する欄があって、「無し」と書き込んだという俳句です。未婚なのか、離別、死別したのか、その辺の事情は何も語られていませんが、いずれにしても配偶者のいないことに対する一抹の淋しさ、さらに夜長の静けさをしみじみと感じたのです。昔から、ひとり寝の淋しさは秋の夜長に托して詠われてきました。この句の気分もその伝統の延長線上にあるものですが、役所の書類という物を題材としたことで、現代人らしい感慨が表現されています。

  霜柱崩れぬままに日は暮れて
  風船のミッキーマウス膨らます
  県警の電光板に紅葉散る
  によつきりと木洩れ日に立つ茸かな
  捲るには惜しき表紙や新暦
  白バイに触り放題子供の日
  梧桐は刑務所在りし頃のまま
  攩網で落葉を掬ふ守衛かな
  侘助の落花そのまま休診日
  使ひ道無き空き箱や年の暮
  暑き日や高架下なる駅事務所
  ライオンも虎も寝てたと遠足児
  配偶者無しと書き込む夜長かな
  雪遊びしたる痕あり競売地
  紅梅や伏籠の中の軍鶏の声
  強東風や旗竿叩く旗のひも
  鬼灯市追加の鉢が届けられ
  音を背に花火大会後にする
  誦経しておもむろに厨子開帳す
  夕焼けを来て着水す水上機 
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学
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プロフィール

前北かおる

Author:前北かおる
 昭和53年4月28日生まれ。慶應義塾大学俳句研究会、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。「夏潮」運営委員を務める。平成23年5月、第一句集『ラフマニノフ』を上梓。平成27年12月、第二句集『虹の島』を上梓。千葉県八千代市在住。

 
 
 
 
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『夏潮』Web俳句鑑賞を担当しています。お気軽にご投稿ください。
 
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