Category・本井英主宰近詠鑑賞 1/26

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年9月号

  毛虫焼けば数珠繋がりに墜ちにけり 「毛虫焼く」が季題で夏。木の枝にでも絡め取った何匹かの毛虫に火をつけたのでしょう。すると、燃えながら毛虫がばらばらと枝から落ちたのです。この句は、その様を「数珠繋がり」と表現していますが、毛虫の落ちざまがよく見えてきます。同時に、「数珠」という言葉に、放っておくこともできず仕方なく焼く毛虫に対する供養の気持ちが出ていて味わい深いと思いました。  木耳の重さずし...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年8月号

  船虫に英傑のあり凡夫あり 「船虫」が季題で夏。船虫の挙措動作を見ていると、わらわらと右往左往しているばかりに見える中に、英傑らしく勇気を感じるようなものを見つけたのです。それに感心する一方、残りは当たり前に波間を逃げ惑っている凡夫たちです。「英傑」に気がついてみると、その「凡夫」たちにも愛すべきところがあると思えてきたという俳句です。「凡夫あり」を後に置いたところに、作者の関心の移ろいが表現さ...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年7月号

  惜しむべき春としもなく過ぎゆくよ 「春惜しむ」が季題で春。何か良くないことが起こった春だったのでしょう。それでも、時がものを解決するように過ぎ去っていくことだと感慨を深くしているのです。虚子に「時ものを解決するや春を待つ」の俳句がありますが、これは冬の間にややこしい出来事があったことになります。掲出句の場合は、謳歌すべき春を不本意に過ごし、それがようやくという気持ちを詠っています。いずれにして...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年6月号

  料峭や病禍地を這ひ海に浮かび 「料峭」が季題で春。風がまだ寒く感じられる頃、流行病が広まってゆくのですが、大地を這うように感染地域が拡大し、一方では海に浮かんだ島の中で爆発的な感染が起こっている、という俳句です。今回のコロナウイルスにあてはめれば、「海に浮かび」はクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号ということになります。「病禍」の描写として、「地を這ひ」はわかりやすいですが、「海に浮かび」は...

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2020年5月号

  西行を慕ふは誰も三千風忌 「三千風忌」が季題で春。初代鴫立庵主、大淀三千風の忌日は正月八日。諸国を遍歴し西行を顕彰した三千風を思うにつけて、西行は誰からも慕われていることだと思ったという俳句です。作者は、昨年新たに鴫立庵主となりました。そこから離れても、三千風を慕う人間にとっての西行、そして日本文学を愛好する者にとっての西行の存在感が大仰でなく詠われていて共感できます。それもこれも、「慕ふ」と...

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