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俳諧師 前北かおる

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年8月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: 夏潮  本井英  
  蚕豆をただ焼くだけの馳走にて
 「蚕豆」が季題で夏。「ただ焼くだけ」と言っていますから、馳走をする側の視点で詠んだ俳句ということになります。自ら育てたのか、地元で採れたものか、いずれにしても「馳走」になるという自負もあるのでしょう。来客をもてなすのに、自慢の蚕豆をシンプルに焼いて味わってもらったという俳句です。蚕豆の太り具合や香り、莢を割った時の瑞々しい色などが目に浮かぶようですし、主客の気の置けない関係も想像されます。くつろいだ雰囲気が食欲を刺激する俳句です。

  わけもなく立夏がうれしかりしころ
  風呂をいただき麦飯にもよばれ
  地の底に清滝川や若楓
  つばくらめ青と見え紫と見え
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テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年7月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: 本井英  夏潮  
  つつがの身ながら今日あり葱坊主
 「葱坊主」が季題で春。病気持ちの身体ではあるが、今日まで生きながらえて葱坊主を見ていることだという俳句です。春たけなわの陽気に伸びて花を咲かせている葱を見ながら、作者は自らの現状を客観視しています。この葱坊主は窓から見ているのではなくて、屋外に出て見ているように思われます。そして、もう冬に逆戻りすることはないだろうと思えるところまで、病気の状態が回復したのかも知れません。小康を得てほっとした気持ちが、葱坊主という季題から伝わってきます。

  一病を養つてをる朝寝かな
  朝桜くまなく照らし出されたり
  英霊の叔父さんのこと磯遊
  つつがの身ながら今日あり葱坊主
  海月大人よろづてきぱきとは行かぬ
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年6月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: 夏潮  本井英  
  二三戸はありけむ野梅咲くばかり
 「野梅」が季題で春。山里の情景を詠んだものでしょうか。少し前までは二三戸の農家があったらしく、田圃だったらしい場所、家が建っていたらしい場所、傾斜地を利用するための石垣などが残されているのでしょう。今は建物もなくなり、田畑も荒れてしまい、野梅が花を咲かせているばかりだという俳句です。作者は、昔、二三家族の暮らせていたその土地が打ち棄てられていることを惜しんでいるようです。歳月と自然の営みの確かさとが思われて、味わい深い一句です。

  啓蟄の地へ下ろしたるユンボかな
  地虫出づる日にして灰の水曜日
  文士村とて似顔絵もあたたかし
  卒業式了へてそのまま来し墓前
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年5月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: ---
  知らぬ人が春一番と言つて過ぐ
 「春一番」が季題で春。風の強い日の雑踏を歩いているのでしょう。作者は、行き交う人々の発する言葉の中に「春一番」の一語を聞きとめたのです。風に難儀しているばかりだったところ、思いがけない形で「春」の訪れを知らされたことを、このように詠ったのでしょう。「知らぬ人」「過ぐ」というところに、はっとさせられた驚きが読み込まれています。

  犬ふぐり拗ね者もなく咲きそろひ
  この里に幾観世音春時雨
  磯原におつかぶされる余寒かな
  離り見て梅林は色やはらかき
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年4月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: ---
    明治村
  白いもの落ちて来さうや明治村
 「白いもの落ちて」が季題で冬。雪のことをこのように言ってもよいのでしょう。真冬に明治の建築を集めた明治村を訪ねたところ、曇り空から今にも雪が降りそうな天気になってきたのです。草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」ではないですが、そんな天気がまた明治村に似つかわしく思われたのでしょう。雪を「白いもの」と表現したところも含めて、興に乗るった感じが出ています。

  足裏にひつつく床や寒稽古
  鴨の陣解けと朝日が促すよ
  伝令のごと鴨の陣抜け出せる
  日脚伸ぶ日々を閑散スキー場
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学
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プロフィール

前北かおる

Author:前北かおる
 昭和53年4月28日生まれ。慶應義塾大学俳句研究会、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。「夏潮」運営委員を務める。平成23年5月、第一句集『ラフマニノフ』を上梓。平成27年12月、第二句集『虹の島』を上梓。千葉県八千代市在住。

 
 
 
 
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『夏潮』Web俳句鑑賞を担当しています。お気軽にご投稿ください。
 
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