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俳諧師 前北かおる

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本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年10月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: 本井英  夏潮  
  食べかけがあれこれ老の冷蔵庫
 「冷蔵庫」が季題で夏。食べきれなかったおかずを、また次の食事の時に食べようと、ラップをかけて冷蔵庫に入れておくのです。ところが、また次の食事に作ったおかずも余らせてしまい、冷蔵庫にだんだん食べ物が増えていってしまうのでしょう。昔であれば簡単に平らげてしまっていたものが、食が細ったうえに、暑さにもやられているのか余らせてしまいます。そして、冷蔵庫を開けるたびにそれが目に入ってきて、淋しい嫌な気持ちになるのです。斬新な措辞の俳句ですが、老いや現代の家族のあり方などがしみじみと思われます。「冷蔵庫」という季題の新たな一面を切りひらく作品と言えるかも知れません。

  箱釣の水ぶちまけて駐車場
  箱釣の箱立てかけてありにけり
  月見草これも山中湖のはなし
  二の丸で見かけし日傘本丸に
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テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年9月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: ---
  東京から来し人々に梅雨晴間
 「梅雨晴間」が季題で夏。どこの地方かわかりませんが、東京から大勢で来る人々を迎えるときのこと。あちこち案内したり、名物を味わってもらったりという算段をする中で、準備の段階からお天気のことが気にかかっていたのです。折角遠方から来てもらうのに雨では気の毒ですし、楽しんでもらえなければこちらも残念です。やきもきしていたところ、当日はどうにか晴間を得て、作者も胸を撫で下ろしたのです。「東京から来し人々」という言い方で迎える側の心境を想像させるところが巧みで、面白い一句です。

  梅雨晴や病めば病を主とし
  塗りつけし白の重たし半夏生
  刃もてとげし本懐虎ヶ雨
  男は死に女は生きて虎ヶ雨
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年8月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: 夏潮  本井英  
  蚕豆をただ焼くだけの馳走にて
 「蚕豆」が季題で夏。「ただ焼くだけ」と言っていますから、馳走をする側の視点で詠んだ俳句ということになります。自ら育てたのか、地元で採れたものか、いずれにしても「馳走」になるという自負もあるのでしょう。来客をもてなすのに、自慢の蚕豆をシンプルに焼いて味わってもらったという俳句です。蚕豆の太り具合や香り、莢を割った時の瑞々しい色などが目に浮かぶようですし、主客の気の置けない関係も想像されます。くつろいだ雰囲気が食欲を刺激する俳句です。

  わけもなく立夏がうれしかりしころ
  風呂をいただき麦飯にもよばれ
  地の底に清滝川や若楓
  つばくらめ青と見え紫と見え
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年7月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: 本井英  夏潮  
  つつがの身ながら今日あり葱坊主
 「葱坊主」が季題で春。病気持ちの身体ではあるが、今日まで生きながらえて葱坊主を見ていることだという俳句です。春たけなわの陽気に伸びて花を咲かせている葱を見ながら、作者は自らの現状を客観視しています。この葱坊主は窓から見ているのではなくて、屋外に出て見ているように思われます。そして、もう冬に逆戻りすることはないだろうと思えるところまで、病気の状態が回復したのかも知れません。小康を得てほっとした気持ちが、葱坊主という季題から伝わってきます。

  一病を養つてをる朝寝かな
  朝桜くまなく照らし出されたり
  英霊の叔父さんのこと磯遊
  つつがの身ながら今日あり葱坊主
  海月大人よろづてきぱきとは行かぬ
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

本井英主宰近詠鑑賞。「夏潮」2019年6月号


Category: 俳句 > 本井英主宰近詠鑑賞   Tags: 夏潮  本井英  
  二三戸はありけむ野梅咲くばかり
 「野梅」が季題で春。山里の情景を詠んだものでしょうか。少し前までは二三戸の農家があったらしく、田圃だったらしい場所、家が建っていたらしい場所、傾斜地を利用するための石垣などが残されているのでしょう。今は建物もなくなり、田畑も荒れてしまい、野梅が花を咲かせているばかりだという俳句です。作者は、昔、二三家族の暮らせていたその土地が打ち棄てられていることを惜しんでいるようです。歳月と自然の営みの確かさとが思われて、味わい深い一句です。

  啓蟄の地へ下ろしたるユンボかな
  地虫出づる日にして灰の水曜日
  文士村とて似顔絵もあたたかし
  卒業式了へてそのまま来し墓前
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学
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プロフィール

前北かおる

Author:前北かおる
 昭和53年4月28日生まれ。慶應義塾大学俳句研究会、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。「夏潮」運営委員を務める。平成23年5月、第一句集『ラフマニノフ』を上梓。平成27年12月、第二句集『虹の島』を上梓。千葉県八千代市在住。

 
 
 
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