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俳諧師 前北かおる

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『俳コレ』。その22(依光陽子)


Category: 俳句 > 『俳コレ』鑑賞   Tags: 依光陽子  俳コレ  週刊俳句  邑書林  
 『俳コレ』最終回は、依光陽子さんの「飄然」です。二つ三つの素材をきっちりと配置した句が目立ちますが、感じたことをさらっと詠った句に惹かれました。

  手の甲をつめたく流れ梨の皮
 「梨」が季題で秋。梨を剥いているのです。手の甲をつめたく流れていくように感じられながら、剥いた梨の皮が長くなっていくという俳句です。「流れ」と言ったことで、梨の含んでいる水分や、剥くスピードまでわかる句になったと思いました。

  白猫は汚れ泰山木の花
  手の甲をつめたく流れ梨の皮
  石楠花の色うつしたる黒電話
  草むしり椋鳥のごとくに五六人
  ぎくしやくと蜘蛛の動くは囲を張れる
  パンジーや大きな犬の首を抱く
  壺焼の貝の角より出る煙
  船が鳴りビルに灯の入る涼みかな
  蓋開けて旧き我あり春の風
  筋雲や茅花流しの野に立てば
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テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

『俳コレ』。その21(津川絵理子)


Category: 俳句 > 『俳コレ』鑑賞   Tags: 週刊俳句  邑書林  俳コレ  津川絵理子  
 『俳コレ』もいよいよ20回目、津川絵理子さんの「初心の香」です。日常的な題材を穏やかに詠われていて、一般性のある作品が並んでいるという印象を受けました。作者の見たもの、感じたことがきっちりと表現されているので、読者としても心地よく読めました。

  樹の色になじんできたる巣箱かな
 「巣箱」が季題で春。枝の上に付けられてからしばらく経ったのでしょう、雨に濡れたり、日に晒されたりして、樹の色になじんできたそんな巣箱であるよ、という俳句です。「たる」ですから、それほど古くなているわけではなく、ちょうどなじんできたところなのです。庭木にみずからつけたものなのか、窓から見える隣家のものか、毎日通る道にあるものなのか、いずれにしても真新しい頃から見てきた巣箱のようです。鳥は棲んでいるのか、まだなのかなどと、楽しい想像のふくらむ一句だと思いました。

  校門を出てくちぶえの卒業歌
  鈴振るやうに間引菜の土落とす
  緑陰に楽器のやうなオートバイ
  見えさうな金木犀の香なりけり
  燕来る朱のあたらしき中華街
  綿虫や仕舞ひつつ売るみやげもの
  道場は校舎に離れ梅白し
  樹の色になじんできたる巣箱かな
  桜餅泪の味のしたりけり
  教室の入口ふたつヒヤシンス
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

『俳コレ』。その20(谷口智行)


Category: 俳句 > 『俳コレ』鑑賞   Tags: 俳コレ  谷口智行  週刊俳句  邑書林  
 『俳コレ』、谷口智行さんの「紀のわたつみのやまつみの」です。新宮で医師をされている方で、熊野の景物、「検死」を詠った句が多いのが特徴的です。

  滝しぶき燓噲草(はんくわいさう)を揺らしけり
 「滝」が季題で夏。滝しぶきが滝壺のほとりにある燓噲草を揺らしているという句です。燓噲草はキク科の植物で黄色い花をつけます。山奥の草深い中にかかる滝のたたずまいがよく描かれていると思いました。

  田植女のざぶざぶ何か用かと来
  梅雨の蛾の翅はみ出せり千羽鶴
  黴の医書よりひときれの新体詩
  稚児蟹の万歳誰か止めてやれ
  ぞぞと地を這ふ月光の新聞紙
  縫へと言ふ猟犬の腹裂けたるを
  子でゞ虫くつついてゐる山刀
  滝しぶき燓噲草(はんくわいさう)を揺らしけり
  冬木の芽鵙の贄より突き出たる
  色町の寒灯ぐづりながら点く
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

『俳コレ』。その19(望月周)


Category: 俳句 > 『俳コレ』鑑賞   Tags: 望月周  俳コレ  週刊俳句  邑書林  
 『俳コレ』、いよいよ終わりが見えてきました。望月周さんの「雨のあと」です。物に即して詠むというのではなくて、構図をしっかり練って作り込んである俳句という印象を受けました。美術館で絵画や彫刻を見て回る時のような気分で読みました。

  遠火事の百年燃えてゐるごとし
 「遠火事」が季題で冬。遠くで起こる火事を眺めているのですが、そのあたりがぼおっと明るくなっているのでしょう。炎の動きも見えず、まるで百年燃えているように見えるというのです。「火事と喧嘩は江戸の花」という言葉もありますが、火事の美しさを格好良く捉えた一句だと思いました。

  春の月高き砂丘を離れたり
  恋は止めよと恋猫を送りだす
  壺の花虫籠に散りかかりけり
  遠火事の百年燃えてゐるごとし
  置いてゆく本も結はきぬ春の雪
  滝音はつねに新しそれを聞く
  滝壺の底を青火が泳ぐかと
  花火師がさらに短く草を刈る
  猟犬の肋あらはに食ひ下がる
  鷹匠の膝のうしろを鷹よぎる
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

『俳コレ』。その18(津久井健之)


Category: 俳句 > 『俳コレ』鑑賞   Tags: 津久井健之  俳コレ  週刊俳句  邑書林  
 『俳コレ』その18、津久井健之さんの「ぽけっと」です。静かな俳句を作る方です。ピントを絞り省略を効かせる詠いぶりで、句に余韻があります。人間にたとえれば、背中で語る無口な男という感じでしょうか。

  押入れに入つてみたる遅日かな
 「遅日」が季題で春。春の夕暮れ、おそらく一人で部屋にいるのでしょう。ふと思い立って押入れに入ってみたというのです。季題が「遅日」なので、淋しいわけではなくて童心にかえってみたということだと思います。子供の頃にそんなことをして遊んだことを思い出したのか、ドラえもんに真似てみたのか、一人で興じているのです。「入つてみたる」と妙にゆったり言ったところにおかしみがあります。

  押入れに入つてみたる遅日かな
  鉢土を地に還しけり若葉風
  ほろ酔ひに風呂洗ひたる桜桃忌
  文庫(ふみくら)へつづく小径や額の花
  しろがねのけむりをとほす網戸かな
  鼻すぢはこはさずに泣く涼しさよ
  かなかなや針のごとくに若白髪
  サイドミラーバックミラーの芒原
  三脚の脚を落葉に埋めけり
  白息の消えて鉄棒残りけり
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学
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プロフィール

前北かおる

Author:前北かおる
 昭和53年4月28日生まれ。慶應義塾大学俳句研究会、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。「夏潮」運営委員を務める。平成23年5月、第一句集『ラフマニノフ』を上梓。平成27年12月、第二句集『虹の島』を上梓。千葉県八千代市在住。

 
 
 
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