Category・『俳コレ』鑑賞 1/5

『俳コレ』。その22(依光陽子)

 『俳コレ』最終回は、依光陽子さんの「飄然」です。二つ三つの素材をきっちりと配置した句が目立ちますが、感じたことをさらっと詠った句に惹かれました。  手の甲をつめたく流れ梨の皮 「梨」が季題で秋。梨を剥いているのです。手の甲をつめたく流れていくように感じられながら、剥いた梨の皮が長くなっていくという俳句です。「流れ」と言ったことで、梨の含んでいる水分や、剥くスピードまでわかる句になったと思いました...

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『俳コレ』。その21(津川絵理子)

 『俳コレ』もいよいよ20回目、津川絵理子さんの「初心の香」です。日常的な題材を穏やかに詠われていて、一般性のある作品が並んでいるという印象を受けました。作者の見たもの、感じたことがきっちりと表現されているので、読者としても心地よく読めました。  樹の色になじんできたる巣箱かな 「巣箱」が季題で春。枝の上に付けられてからしばらく経ったのでしょう、雨に濡れたり、日に晒されたりして、樹の色になじんできた...

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『俳コレ』。その20(谷口智行)

 『俳コレ』、谷口智行さんの「紀のわたつみのやまつみの」です。新宮で医師をされている方で、熊野の景物、「検死」を詠った句が多いのが特徴的です。  滝しぶき燓噲草(はんくわいさう)を揺らしけり 「滝」が季題で夏。滝しぶきが滝壺のほとりにある燓噲草を揺らしているという句です。燓噲草はキク科の植物で黄色い花をつけます。山奥の草深い中にかかる滝のたたずまいがよく描かれて...

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『俳コレ』。その19(望月周)

 『俳コレ』、いよいよ終わりが見えてきました。望月周さんの「雨のあと」です。物に即して詠むというのではなくて、構図をしっかり練って作り込んである俳句という印象を受けました。美術館で絵画や彫刻を見て回る時のような気分で読みました。  遠火事の百年燃えてゐるごとし 「遠火事」が季題で冬。遠くで起こる火事を眺めているのですが、そのあたりがぼおっと明るくなっているのでしょう。炎の動きも見えず、まるで百年燃...

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『俳コレ』。その18(津久井健之)

 『俳コレ』その18、津久井健之さんの「ぽけっと」です。静かな俳句を作る方です。ピントを絞り省略を効かせる詠いぶりで、句に余韻があります。人間にたとえれば、背中で語る無口な男という感じでしょうか。  押入れに入つてみたる遅日かな 「遅日」が季題で春。春の夕暮れ、おそらく一人で部屋にいるのでしょう。ふと思い立って押入れに入ってみたというのです。季題が「遅日」なので、淋しいわけではなくて童心にかえってみ...

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