Category・小沢藪柑子句集『商船旗』鑑賞 1/5

小沢藪柑子句集『商船旗』鑑賞。最終回

 20句鑑賞が終わりましたので、最後に蛇足を書いてみたいと思います。 『商船旗』を読んで感じたのは、緻密な俳句が多いということです。一語一語の意味、その組み合わせによって浮かび上がる意味を厳密に考慮して定型に収めてあるという印象を持ちました。実際には眼前にある景から省略によって言葉をそぎ落として一句にしているのでしょうが、景の中の要素を一度ばらばらに分解した上で言葉の力で再構築してあるようなゆるぎの...

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小沢藪柑子句集『商船旗』鑑賞。その20

  茶色とも黒ともつかぬ毛虫かな 「毛虫」が季題で夏。茶色とも黒とも言えないような色合いの毛虫であることよ、という俳句です。何か特別なことを言っているわけではありません。しかし、「~とも~ともつかぬ」と余裕ある調子で詠ったことで、毛虫に対する一種の憐れみが表現されています。花鳥諷詠らしい俳句ではないでしょうか。...

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小沢藪柑子句集『商船旗』鑑賞。その19

  いちめんの代田のなかの交差点 「代田」が季題で夏。「富山 二句」と前書があります。見渡す限りの田植えを待つ代田、その真っ平らな景色の中の交差点よ、という俳句です。きっちり真四角に区画整理された田の中に、真っ直ぐに走る道同士が交差しているのでしょう。「いちめん」、「なか」と仮名を使ったことで、幾何学的な景に少しやわらかさが出ていると思います。...

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小沢藪柑子句集『商船旗』鑑賞。その18

  帰らないラヂオゾンデを春風に 「春風」が季題で春。「ラヂオゾンデ」というのは、ゴム気球につけて飛ばされる気象観測機器で、日本から飛ばされるものは最後は太平洋に落下するそうです。その帰ってくることのない「ラヂオゾンデ」を、春風にのせて飛ばしてやっているという俳句です。「春風に」と動詞を省略した下五が、感傷的な余韻を作り出しています。「ラヂオゾンデ」という思いを寄せにくそうな対象を甘く詠って詩にし...

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小沢藪柑子句集『商船旗』鑑賞。その17

  源流へ向かふ踏跡山の春 「山の春」が季題で春。谷を登り詰めていくと、最後に山頂へ向けて道は沢を外れていきます。登山者はそちらを辿るのですが、よく見ると水源とおぼしき方へ誰かが踏み入った跡があるのです。考えてみると、この沢は次第に水を集めて大河となって海に注ぐのです。その源流を訪ねたくなった人に思いを馳せるにつけても、山にようやくやって来た春が喜ばれることだという俳句です。 「源流」という名詞に...

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