Category・夏潮第零句集鑑賞 1/4

湯浅善兵衛句集『枇杷の花』(第零句集⑳)

 いよいよ第零句集第二期最後の一冊となりました。志木高、慶大俳句の大先輩で、志木高OB句会、枇杷の会の幹事を務めてくださっていた湯浅善兵衛さんの『枇杷の花』です。朴訥な感じの俳句が多く、お人柄が偲ばれる一冊です。  地図になきカミオカンデや山笑ふ 「山笑ふ」が季題で春。「カミオカンデ」はノーベル賞で有名になったニュートリノの実験施設ですが、作者はそんな施設があることを意識せずにこの山間の町を訪ねた...

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原昇平句集『アスパラガス』(第零句集⑲)

 夏潮第零句集、今月は同級生、原昇平君の『アスパラガス』です。夏潮には珍しく、孤独、寂しさを基調にした一冊です。極力情を排した詠いぶりで、淡い感触を伝えた句が魅力的です。  晴るゝ日の少なくなりて神の留守 「神の留守」が季題で冬。陰暦十月、神々が出雲へ行ってしまう神無月のことをこう言います。小春とも言って、太平洋側では晴れる日が多くなりますが、反対に日本海側は初雪が降り、降雨量が増えはじめる時期で...

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石神主水句集『神の峰』(第零句集⑱)

 夏潮第零句集、今月は石神主水さんの『神の峰』です。感傷的な句、ロマンチックな句が鏤められていて、作者の繊細な心を垣間見ることのできる句集になっています。  木の芽吹く雑木に君のかくれてゐ 「木の芽」が季題で春。恋人同士、森に来ているのです。戯れに、彼女が木の陰に隠れたのでしょう。木の芽吹く雑木の陰にその姿を見つけて、かわいらしいと思ったという俳句です。まるでおとぎ話に出てくる恋人たちのようです。...

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矢沢六平句集『秋高し』(第零句集⑰)

 夏潮第零句集、今月は矢沢六平さんの『秋高し』です。人間を詠った俳句が多く、人の温もりを感じさせる句集になっています。  宿浴衣着てそれぞれに家族なる 「浴衣」が季題で夏。旅館の夕食時でしょうか、浴衣に着替えた家族が食堂に集まってくるのです。くつろいだ様子の家族を見比べてみると、着ている浴衣は同じでも姿形や仕草がそれぞれ違っていて、どこかほほえましく感じられてくるのです。作者はそれを一人で見ながら...

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田中香句集『雪兎』(第零句集⑯)

 夏潮第零句集、今月は田中香さんの『雪兎』です。福岡の学校にお勤めの方です。 誠実な写生句が魅力的で、一音も無駄にしないという姿勢が感じられます。  白波の横一線や南風吹く 「南風」が季題で夏。初夏には「卯波」という季題もありますが、これは梅雨が明けた頃の景色でしょうか。沖から白波がかなり幅広く横一線に寄せてくる、そして波の上を気持ちの良い南風が吹き寄せてくることだという俳句です。「や」の切れ字に...

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