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俳諧師 前北かおる

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湯浅善兵衛句集『枇杷の花』(第零句集⑳)


Category: 俳句 > 夏潮第零句集鑑賞   Tags: 湯浅善兵衛  枇杷の花  第零句集  夏潮  
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 いよいよ第零句集第二期最後の一冊となりました。志木高、慶大俳句の大先輩で、志木高OB句会、枇杷の会の幹事を務めてくださっていた湯浅善兵衛さんの『枇杷の花』です。朴訥な感じの俳句が多く、お人柄が偲ばれる一冊です。

  地図になきカミオカンデや山笑ふ
 「山笑ふ」が季題で春。「カミオカンデ」はノーベル賞で有名になったニュートリノの実験施設ですが、作者はそんな施設があることを意識せずにこの山間の町を訪ねたのです。おそらくカーナビの地図を見ながら車を運転していたのでしょう。すると、突然、地図にも書かれていなかった「カミオカンデ」の標識が目に入ったのです。春の山が笑っているばかりのこんな土地で、ノーベル賞をもらうような実験が行われていたのかと感心したという俳句です。
 「地図になき」の一語が、新鮮な驚きを伝えていて巧みだと思いました。

  スロープを上る息子や大試験
  地図になきカミオカンデや山笑ふ
  春の波来たりて磯を舐め尽くし
  寄居虫を水に戻してじっと待つ
  山葵田の梯子を登り覗き視る
  隣家のひと雨ごとの七変化
  どこからもグラジオラスに見つめられ
  鶏頭のそぼ降る雨になほ紅き
  ミゼットの走る雲南秋の暮
  異動してべったら市も遠のきて
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テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

原昇平句集『アスパラガス』(第零句集⑲)


Category: 俳句 > 夏潮第零句集鑑賞   Tags: 夏潮  第零句集  原昇平  アスパラガス  
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 夏潮第零句集、今月は同級生、原昇平君の『アスパラガス』です。夏潮には珍しく、孤独、寂しさを基調にした一冊です。極力情を排した詠いぶりで、淡い感触を伝えた句が魅力的です。

  晴るゝ日の少なくなりて神の留守
 「神の留守」が季題で冬。陰暦十月、神々が出雲へ行ってしまう神無月のことをこう言います。小春とも言って、太平洋側では晴れる日が多くなりますが、反対に日本海側は初雪が降り、降雨量が増えはじめる時期です。そんな地方の冬の始まりを素っ気なく詠んでいるのです。淡々と言ったことで、かえって実感の伝わってくる一句だと思いました。

  木蓮の白さばかりが雨の中
  ためらひの鋏を入れて鶏頭花
  薄味を好みし父や煮大根
  春の風邪机に頰を付けてみる
  ぱり(ぱり)と袋を開けて袋掛
  沢蟹の鋏の先の透き通る
  真白なる皿に残りし梨の水
  晴るゝ日の少なくなりて神の留守
  眠られぬ夜の眠りや虎落笛
  アスパラの穂先で空に落書きす
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

石神主水句集『神の峰』(第零句集⑱)


Category: 俳句 > 夏潮第零句集鑑賞   Tags: 石神主水  神の峰  第零句集  夏潮  
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 夏潮第零句集、今月は石神主水さんの『神の峰』です。感傷的な句、ロマンチックな句が鏤められていて、作者の繊細な心を垣間見ることのできる句集になっています。

  木の芽吹く雑木に君のかくれてゐ
 「木の芽」が季題で春。恋人同士、森に来ているのです。戯れに、彼女が木の陰に隠れたのでしょう。木の芽吹く雑木の陰にその姿を見つけて、かわいらしいと思ったという俳句です。まるでおとぎ話に出てくる恋人たちのようです。「木の芽吹く」という季題の力で、甘いというよりは輝かしい句に仕上げられていて素敵です。

  煮返して二人分無き鰤大根
  心あてにバレンタインの予定あけ
  満開の花やぺたりと子のころび
  木の芽吹く雑木に君のかくれてゐ
  夏夕フランス菓子のはなしなど
  枯蔦やイギリス積みのレンガ塀
  雛くるむ古新聞の昭和かな
  朝涼のロッジの窓を開け放ち
  とんぼうのくくと羽折り休みたる
  古伊万里のかけら打ち寄せ春浅し
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

矢沢六平句集『秋高し』(第零句集⑰)


Category: 俳句 > 夏潮第零句集鑑賞   Tags: 夏潮  矢沢六平  第零句集  秋高し  
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 夏潮第零句集、今月は矢沢六平さんの『秋高し』です。人間を詠った俳句が多く、人の温もりを感じさせる句集になっています。

  宿浴衣着てそれぞれに家族なる
 「浴衣」が季題で夏。旅館の夕食時でしょうか、浴衣に着替えた家族が食堂に集まってくるのです。くつろいだ様子の家族を見比べてみると、着ている浴衣は同じでも姿形や仕草がそれぞれ違っていて、どこかほほえましく感じられてくるのです。作者はそれを一人で見ながら、家族の温もりを思い出しているのでしょう。登場人物たちの体温がじかに伝わってくるような俳句です。

  赤いべべ着ておつくべや雛祭
  猫の仔を鷲摑みしてよこしけり
  捨て舟の船底平ら菱の花
  宿浴衣着てそれぞれに家族なる
  雨合羽脱いで涼しき大庇
  硝子戸のガラスに屋号心太
  稲妻に出奔の胸騒ぎかな
  夕暮を案山子担ひて帰りけり
  宿坊の御厨昏し菊膾
  なつかしき祖母の小言や柿熟るる
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学

田中香句集『雪兎』(第零句集⑯)


Category: 俳句 > 夏潮第零句集鑑賞   Tags: 夏潮  田中香  雪兎  第零句集  
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 夏潮第零句集、今月は田中香さんの『雪兎』です。福岡の学校にお勤めの方です。
 誠実な写生句が魅力的で、一音も無駄にしないという姿勢が感じられます。

  白波の横一線や南風吹く
 「南風」が季題で夏。初夏には「卯波」という季題もありますが、これは梅雨が明けた頃の景色でしょうか。沖から白波がかなり幅広く横一線に寄せてくる、そして波の上を気持ちの良い南風が吹き寄せてくることだという俳句です。「や」の切れ字によっての勢いが表現されていて良いと思いました。

  レコードに針を落として籐寝椅子
  白波の横一線や南風吹く
  鱚釣りの錘の跡の砂浜に
  蚊遣火の煙を乱し猫通る
  蓮の葉のしたゝかに雨零しけり
  おはじきのごと銀杏を分け合へり
  臘梅を離るゝときにふと香る
  立春といふ心もて雪に立つ
  真円に開き初めたる八重椿
  高層に窓拭く人や今朝の秋
テーマ : 俳句    ジャンル : 小説・文学
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プロフィール

前北かおる

Author:前北かおる
 昭和53年4月28日生まれ。慶應義塾大学俳句研究会、「惜春」を経て、「夏潮」創刊に参加する。第1回黒潮賞受賞。「夏潮」運営委員を務める。平成23年5月、第一句集『ラフマニノフ』を上梓。平成27年12月、第二句集『虹の島』を上梓。千葉県八千代市在住。

 
 
 
 
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