Category・本井英句集『守る』鑑賞 1/1

本井英句集『守る』鑑賞。その4

  照らされてお水送りの瀧枕 「お水送り」が季題で春。東大寺のお水送りの前に、若狭小浜の神宮寺で行われる行事です。クライマックスとして、大きな松明に照らされた川面に白装束の住職が香水を注ぐ儀式があります。古来、この川は地下で奈良へとつながっていると信じられていて、十日かけて奈良に届いた水が若狭井から汲み上げられることになります。この句の「瀧枕」は早瀬が盛り上がっているところのことですが、香水の注が...

  • 0
  • 0

本井英句集『守る』鑑賞。その3

  煮凝がごはんで溶けてゆくかをり  「煮凝」が季題で冬。魚などを煮た汁が固まったものを言います。わざわざ固めた料理も「煮凝」ですが、この句の場合は昨晩の残りを朝食にしている感じでしょうか。ご飯は炊きたてで、煮魚の残りを冷たいまま載せて食べようとしているのです。ご飯にのせたところから煮凝が溶けてきて、食欲をそそる香りが漂ってきます。食べ物の俳句は、おいしそうに詠めとはよく言われることですが、やや無...

  • 0
  • 0

本井英句集『守る』鑑賞。その2

  薔薇の名となりてより幸薄かりき 「薔薇」が季題で夏。薔薇の名前には、人名をそのままとったものも多くあります。亡くなってから薔薇の名となる場合もありますが、この句の場合には、生前に自らの名前を冠した薔薇の新品種を捧げられたわけです。作者がその薔薇の前に立ったとき、既にその人は故人となっています。振り返ってみると、薔薇の名となった頃がその人の絶頂期で、その後は幸せとは言えない人生だったと思われたの...

  • 0
  • 0

本井英句集『守る』鑑賞。その1

 遅ればせながら、本井英先生の第六句集『守る』(2023年9月、ふらんす堂刊)から、20句抽出したものを順に鑑賞していきます。  とめどなき湯玉めでたし福沸 「福沸」が季題で冬。現在は、若水を沸かすことを言い、お雑煮にしたりします。鍋で湯を沸かすだけのことですが、そこに淑気を感じて出来た季題と言えます。この句の場合には、鍋の底から湯玉が次々に浮かんでくる様に、めでたさを感じています。直接「めでたし」とも...

  • 0
  • 0