矢沢六平句集『秋高し』(第零句集⑰)

20130326_145756.jpg
 夏潮第零句集、今月は矢沢六平さんの『秋高し』です。人間を詠った俳句が多く、人の温もりを感じさせる句集になっています。

  宿浴衣着てそれぞれに家族なる
 「浴衣」が季題で夏。旅館の夕食時でしょうか、浴衣に着替えた家族が食堂に集まってくるのです。くつろいだ様子の家族を見比べてみると、着ている浴衣は同じでも姿形や仕草がそれぞれ違っていて、どこかほほえましく感じられてくるのです。作者はそれを一人で見ながら、家族の温もりを思い出しているのでしょう。登場人物たちの体温がじかに伝わってくるような俳句です。

  赤いべべ着ておつくべや雛祭
  猫の仔を鷲摑みしてよこしけり
  捨て舟の船底平ら菱の花
  宿浴衣着てそれぞれに家族なる
  雨合羽脱いで涼しき大庇
  硝子戸のガラスに屋号心太
  稲妻に出奔の胸騒ぎかな
  夕暮を案山子担ひて帰りけり
  宿坊の御厨昏し菊膾
  なつかしき祖母の小言や柿熟るる
関連記事
スポンサーサイト



0 Comments

まだコメントはありません