本井英句集『開落去来』鑑賞。その18

  五月鯉ピエタの如く抱き降ろし
 「五月鯉」が季題で夏。大きな鯉幟を竿から降ろしてきて両手に受け止めたところを目にしたのです。その姿が、作者の目には、まるで十字架から降ろされたキリストを抱く聖母マリアのように見えたという俳句です。なるほど、今の今まで、さかんに風に吹かれていた鯉幟のだらりとした姿や、それを大切に両手に抱いた格好は、「ピエタ」の聖母子に通じるものがあります。そこに、美しさはもちろんですが、労りや慈しみを見てとったので、こんな表現になったのでしょう。かなり美化された描写のように思えますが、「抱き降ろし」と複合動詞で動作を写生したことで、実景との繋がりを保っています。
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