葛西茂美句集『窓』。


 「香雨」同人で俳人協会の夏季俳句指導講座や千葉県支部でご一緒させていただいている葛西茂美さんから句集『』(2019年8月、ふらんす堂刊)をいただきました。ありがとうございます。
 長く千葉県の高校の教員を勤めてこられた方で、「狩」終刊までの作品を収めて編まれた第一句集とのことです。学校や家族など
身のまわりの題材をあたたかい目で観察されていて、素直に共感できました。飄々とした味わいのある作品も散見され、それがはからざる俳諧味を醸し出しています。

  冬の日や古き畳のこがねいろ
 「冬の日」が季題で冬。民宿の部屋か食事処の座敷か、がらんとした和室に冬日が差し込んでいるのです。建物も古いですが、長く面を替えていないらしい畳が敷かれています。作者は、部屋に通されてまず日を照り返して黄金色に輝いている畳に目を奪われ、悪くないなと思ったのでしょう。ごく身近な題材ですが、「ふ」の頭韻や「の」の重なりなど美しい調べが心に染みいるようです。

  ハンカチのくたくたとなり退勤す
  卒業式親に背中を見てもらふ
  火事のこと人に話して鎮まらず
  花の雨母はしづかに湯を使ひ
  冴返る曰く教育困難校
  先生も雪に気づきて寄る
  風鈴を指で弾きて休み果つ
  自然薯の力の抜けて掘り出さる
  鉄橋にさしかかる汽車山桜
  青田風マンタの群れの舞ふごとく
  私とゴリラとしばし懐手
  春を待つカスタネットの青と赤
  くろがねの潮したたる和布刈鎌
  房総の一千尺の山笑ふ
  ほそき父まあるき母よこどもの日
  新涼やらふそくの火のすきとほり
  花失せし茎のとまどひチューリップ
  冬の日や古き畳のこがねいろ
  別れめのめは已然形卒業歌
  渋滞の尾灯川なす十二月
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