眞矢ひろみ句集『箱庭の夜』。

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 「俳句スクエア」、「」同人の眞矢ひろみさんから句集『箱庭の夜』(2020年3月、ふらんす堂刊)をいただきました。ありがとうございます。
 英語HAIKUへの関心から俳句の実作に踏み込まれた作者の第一句集で、「認知」「決意」「追求」「賛美」の四章で構成されています。哲学や宗教に材料を得た作品があったり、また世間で話題になったニュースから着想したものがあったり、難解な俳句も多数収録されています。一方、「青」、「光」の美が繰り返し詠われていて、その新鮮な感覚に共鳴しました。

  意味に飽く少年少女夏の果
 「夏の果」が季題で夏。その日にこなさなければならないこと、その年のイベントが次々にやって来るのが少年期です。常に何かに追われ、さしあたっての進路を選んでいくだけでも大変な忙しさです。同時に、それを行うことの意味、自分は何者かという問いにも向き合わなければなりません。追われながら考える、疲れて逃げ出したくなるのも無理のないことです。夏休み、真空状態におかれて、ふと全てを投げ出したくなったのかもしれません。これは誰もが通ってきた道であり、その記憶をよみがえらせてくれる俳句です。

  蒼天をピアノに映し卒業す
  菜の花や汽笛は遠くぼうと鳴る
  花散つて沖の島影定まらず
  いっせいに命を囃す植田風
  炎天や一人ひとつの影に佇つ
  秋空へつづく白線引きにけり
  逆光の大薄野に迷ひけり
  日を集め日に遠くあり石蕗の花
  青のない色鉛筆や原爆忌
  蒼天を縁どるものに枯はちす
  立夏たりユニクロに立つ父の霊
  磐座に載せるものなき涼しさよ
  意味に飽く少年少女夏の果
  迎火に翳まだ人のかたちして
  薄化粧の兄引きこもる修司の忌
  大岩を割る青蔦のうねりかな
  玉虫になると退職挨拶状
  曼荼羅の余白とは秋風のこと
  小春日や呆けし人のふと真顔
  寒月や羊水にたつ波の音
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