句帳の清書 2000年 その５

　9月2日　行方克巳先生宅
秋風や堤の内の野球場

　9月3日　逗子
珊瑚礁といふレストラン仏桑花

　9月4日
ガイドブック伏せて置きある昼寝かな
穂芒や公会堂の楽屋口

　9月5日　（9月18日　夜鷹の会）
バーベキューにどこからとなく氷菓売
虫の音を収めんと雨催せり

　9月6日　八千代
バンパーのくはへてゐたるゑのこ草
絨毯の捨てられてをりゑのこ草
母屋より古きアトリエ蔦かづら

　9月9日　（9月18日　夜鷹の会）
ニュータウン中央駅の秋桜

　9月10日　（9月18日　夜鷹の会）
芋虫の背ナの斑点縮めけり

　9月10日
主いま中座してをり蘭の花

　9月11日　題詠句会
中天に二十三夜の月なりし

　9月18日
モルタルの壁に這ひをる葡萄かな

　9月26日　惜春夜句会
留守居して雨の芙蓉を眺めをり

　9月27日
プレハブのモデルルームや秋桜
大学へ直線道路秋桜

　9月30日
金網の堰き止めてゐる秋桜

　10月3日
白粉やビルの谷間の参道に
虫の闇しはがるるもの混じりゐし

　10月4日　浜離宮（10月16日　慶大俳句三田句会）
萩叢に便所と札の立ててある
かはるがはる小鳥の降れる水たまり
ちらちらと蝶光りをり萩の叢

　10月8日　戸隠
バス停の待合小屋の秋桜
吾亦紅土台の高きリフト小屋
熊笹の生え際の赤まんまかな

　10月9日　同前
かはるがはるキッチンに立ち長き夜を
話ふと途切れて地虫鳴き出しぬ
ゲレンデがそよいでをりぬ秋の山

　10月9日　（10月16日　慶大俳句三田句会）
エルガーの威風堂々秋深む

　10月10日
ウエディング日和山澄む水澄める

　10月10日　（10月16日　慶大俳句三田句会）
路地奥の接骨院の実むらさき

　10月11日
測量を進めてをりぬ秋桜
新館の足場はづされ天高し

　10月15日　慶大俳句吟行会　鎌倉
門前の珈琲店の秋薔薇

　10月15日　（10月16日　慶大俳句三田句会）
日陰なる参道にして爽けしや

　10月23日　横浜（10月30日　夜鷹の会）
薔薇園に大道芸や天高し

　10月26日　下総松崎駅（10月30日　夜鷹の会）
草叢をはたはたと跳び出だしけり
グリーンの電車が着きぬ柿の駅

　10月26日　下総松崎駅
停まりをる電車の唸り芒原

　10月27日
熟柿の駐輪場に潰れをり

　10月27日　（11月6日　慶大俳句三田句会）
水澄むや納屋へ渡せる板二枚

　10月30日　（11月6日　慶大俳句三田句会）
くるまつてからまつてゐて茨の実

　10月30日
沖遠く観艦式や秋時雨

　10月30日　（11月20日　慶大俳句三田句会）
薮切れて岩肌があり烏瓜