高瀬竟二句集『風樹』。


 「夏潮」でご一緒させていただいている高瀬竟二さんから句集『風樹』(平成23年2月、ふらんす堂刊)をいただきました。ありがとうございます。停年退職後10年間の句をまとめられた第3句集です。
 丁寧な写生句を中心に、大きな題材に立ち向かう句あり、ちょっとした滑稽を詠った句ありで、おもしろかったです。

  凌霄の花月光に触れて落つ
 「凌霄の花」が季題で夏。夜、凌霽の花を見ていると、雲がはれたのか、月光がさしてきたのです。その光が凌霽の花に触れたと思つた瞬間、一つの花が落ちたという俳句です。闇に浮かぶ凌霽花の橙色と月光の白色とが鮮明にイメージされます。また、「月光に触れて」を冒頭に出さずに、「凌霄の花」と「落つ」の間に挿入したことで、非常に静かに仕立てられています。熟練の技の光る一句だと思いました。

  夕立にたたかれてゐる阿蘇の牛
  凌霄の花月光に触れて落つ
  雪吊に雪なき松の匂ひけり
  手の見えて柱のかげの甘茶仏
  軽鳧の子のぶつかり合つて親に蹤く
  紫陽花や一炷立てて秘仏かな
  寄鍋の鍋を蹴つたる蟹の足
  榾焚いて縄文人の顔となる
  壺焼の殻のことりと傾きし
  火祭の火の棒立ちとなりにけり
  凍滝を月光天へ遡る
  能面に血のいろ通ふ花の昼
  涼しさを呼びこむ居間の拭掃除
  膨らんで一粒となり滴れる
  月下美人とろりと夜闇濃くしたる
  廃校の西日の壁の世界地図
  月細しこけしの眉の細ければ
  松手入むかし酒田の本間様
  さらさらと手にすべらせて今年米
  飛ぶ構へ美しければ鷹翔たず
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