青山茂根句集『Babylon』。

青山茂根さんから句集『Babylon』(平成23年8月、ふらんす堂刊)をいただきました。ありがとうございます。
装幀が素敵な一冊です。中を開くと、各ページ2句組になっていて、右の句と左の句とで高さを変えてあります。句集らしからぬ凝った造りになっています。世界中を旅されている方のようで、旅先の情景を詠まれた句に惹かれました。
草いきれごと山羊乳を飲み干しぬ
「草いきれ」が季題で夏。どこの国でしょうか、夏草が茂ってむせかえるような匂いのする地域を旅しているのです。旅先で出会った人にすすめられ山羊の乳を飲むことになったのです。どんな味がするのか、匂いがきつくないかとためらっていると、「うまいから飲め」とせき立てられたのでしょう。草いきれのにおいとともに一気に飲み干したという俳句です。「草いきれ」という季題で周囲の景と山羊の乳の匂いが伝わってきて、臨場感のある俳句に仕上がっていると思いました。
いはれなくてもあれはおほかみの匂ひ
うつぶせに眠りはるかな木枯よ
活版をくづして雪の降りにけり
そして誰もゐなくなつたと湯気立てて
あしゆびをすふがごとくにぶだうかな
夕焼の底に敗者は横たはる
草いきれごと山羊乳を飲み干しぬ
雛壇の裏の奈落に気づかざる
西へ西へと向日葵を倒しつつ
船着くと日盛をまた立ち上がる
脱ぎ捨てしものに影あり後の月
島々に女神ありけり黄水仙
たゆたひて夕日の色の甘茶かな
アフリカの泥の重さの髪洗ふ
清掃夫残る白夜の空港に
どれほどの船を見てきし小鳥かな
秋蚕あふれてぬばたまを食ひつくす
ふくろふと向かひあはざるふくろふよ
男臭くて闇汁の後の部屋
バビロンへ行かう風信子(ヒヤシンス)咲いたなら
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