磯田和子句集『花火』(第零句集②)

「夏潮」第零句集の第二弾は、磯田和子さんの『花火』です。富山の方です。
現代人らしい視点からお詠みになった俳句が多いですが、一方で自然体で郷土を詠まれた句もありました。一冊を通して読むと、肩肘張らずに風土に根ざしている感じで清々しかつたです。
秋繭の籠れる部屋の薄明り
「秋繭」が季題で秋。農家の一室に秋蚕を育てているのです。中二階の部屋を蚕室にしているような、養蚕農家を想像しました。ちょうど蚕が繭に籠もる頃、昼でもあまり日の入ってこない蚕室に薄明かりが差しているという俳句です。春や夏の蚕に比べて少なめに飼うという秋蚕らしい静けを感じました。そして、「籠れる部屋」というところには、やがて来る長い冬を予感させるものがあるように思いました。
若葉風母となる日の近づきぬ
六月の空に触れをり避雷針
曼珠沙華隠れ咲くとはゆかぬらし
秋繭の籠れる部屋の薄明り
成人の日の立山と対峙せる
雪折れに芽吹く力のありにけり
ふいに手を取られ祭の人込みに
ファインダーはみ出し割るゝ大花火
剱岳切っ先蒼く夏に入る
手鏡を伏せて春愁終はりとす
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