本井英主宰近詠鑑賞。『夏潮』2011年11月号

  老いぬれどをみなゆかしや月見草

 「月見草」が季題で夏。年老いたもののなお女性に心がひかれるものだと、暮れ方に花開いた月見草を見ながらしみじみと実感しているという俳句です。若い頃にはもっと「枯れた」老後を想像していたのでしょうが、実際にその年になってみるとそんなものではないと思ったわけです。
 「月見草」という季題と「ゆかし」というような文語で表現したことで、女性への憬れをあっさりと上品に詠っていて素敵だと思いました。

  南座を丸呑みしたる西日かな
  我が生は名残の裏へ月も過ぎ
  芋虫や頷くやうに葉を囓り
  熊鈴のだんだん近し三十三才


  沢水の縮みて伸びて澄めるかな

 「縮みて」の方は幅を狭めて早瀬になる様子が思い浮かびますが、淵に出たところを「伸びて」と言ってしまうのは景から離れていると感じました。
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