永田泰三句集『一歩』(第零句集③)

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 第零句集の第三弾は、永田泰三さんの『一歩』です。八千代にお住まいの牧師さんで、一緒に八千代句会を開いています。
 ストイックに客観写生を追究されていて詠いぶりは朴訥としていますが、聖職者として家庭人として心温まる句の数々が印象的でした。

  己が影に鍬振り下ろし耕せる
 「耕」が季題で春。機械ではなく、鍬を使って畑を耕しているのです。農夫の背後から日が差していて、ちょうど自分の影の部分に鍬を振り下ろす形で耕しているという俳句です。単純作業に黙々と従事するする人の姿がよくわかります。実際の景としては、わざわざ機械を入れるまでもないような狭い畑や山畑のようなものだったのでしょうが、この句からはもっと広い景も思い浮かべることができます。中世の抑圧された農奴などにまで想像の翼を広げさせてくれる句だと思いました。

  蕊を見てをれば香れる梅の花
  己が影に鍬振り下ろし耕せる
  駅を出てそれぞれ家へ春の月
  夏服の少女や手足もてあます
  夏料理髪を束ねて運び来し
  やゝありて秋の風鈴鳴りにけり
  大空に止め撥ね払ひ秋の雲
  ふはふはと湯に浮くやうに芙蓉かな
  月明に休んでゐたるコンバイン
  武田騎馬軍団の如紅葉燃ゆ
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2 Comments

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普段句会をご一緒にしているので仕方ないですが、殆んどの句を知っていたのが残念でした。
何か我々が知らないところで詠まれた物凄い句があっても良いような気がしました。
これは、泰三さんに限らずここまでの第3巻を拝見しての感想です。
100句というのは多い様で少ないですね。

  • 2011/11/02 (Wed) 07:59
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前北かおる

大俳人様。

 雑詠も読んでいるわけで、仕方ないのではないでしょうか。「武田騎馬軍団」は初めて見た冒険句で、良い意味でのサプライズでした。

  • 2011/11/02 (Wed) 14:36
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