櫻井茂之句集『風ノ燕』(第零句集⑤)

第零句集、第五弾は櫻井茂之さんの『風ノ燕』です。刊行と同時に発行された「夏潮」1月号で、第3回黒潮賞受賞が発表されました。藤永貴之さんとともに福岡吟行会の中心メンバーです。
季題とじっくり対話して詠われた作品の数々は夏潮俳句のお手本と言えます。安易に情に流されず、決まり文句のような表現にあてはめず、一句一句が磨かれている点も素晴らしいと思いました。
祖母いつも吾を誉むるや桃の花
「桃の花」が季題で春。離れて住むお祖母さまがいて、昔から会いに行くといつも自分のことを誉めてくれる、いい大人になった今でもやっぱり誉めてくれる、その庭に昔からある桃の木に今年も花が咲いているという俳句です。「祖母」なので、作者名がなくても男性の句と解釈するのが自然かと思います。「桃の花」という季題が、感謝とともにちょっと照れくさく思う気持ちを伝えていて好ましいと思いました。
祖母いつも吾を誉むるや桃の花
岩一つかたかごの花二つかな
秋天に灯台のあり登るなり
受取りの判子を押して跣足かな
澄む水に鷺一ト足をさし入るゝ
やはらかき葉をかきわけて袋掛
機影はるけし八月の雲の中へ
鮟鱇のどろりと箱に入れらるゝ
河口暮れて白魚茶屋の灯せる
雛の灯を落とせば白き面輪かな
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